昔 いた土地と違った言葉
昔 夢見た国と違った風
ずっと馴染みたい ずっと馴染みたくない
そんな気持ちで 今ここにとどまっている
ここが貴女の住む土地よ
そう誘った人が言った言葉
貴女の故郷になればいいわね
そんな言葉が 自分の中で空回り
そんなに雨が珍しい? それとも俺といるとつまらない?
何でもないような問いかけに ふと現実に戻された
飽きもせず窓を見続ける自分に 苦笑したような相手の顔
静かに首を横に振ると 安心したかのようにカップを差し出した
いつもならば深夜にお酒などというのに ちょっと今日は約束違反
なぜなら今日は特別な日なのだから
十年前のこの日 大切にしていた時
確か今まで過ごした時と過ごす時 そんなことを話し合った
そんなことを考えていると やっと隊長と呼べた人が笑う
言えることなら 言ってしまいなよ
一人じゃ無理でもここだったら何とかなるさ
俺だって みんなだって きっと手を貸す
君が君自身で願うことなら
それにここは言った言葉も 力になる
そこまで言って
照れくさそうに背を向けようとした手を 引き留めて
手にしたグラスを 相手のグラスにふれあわせた
小さく小さく響く音 澄んだその音が昔聞いた鐘の音に聞こえて
夜明けの前に 起こった出来事を思い出した
十字架を背負うたとき 哀れだとも当然だとも思えない
ただ不思議なほど静かで 穏やかだった
罪が罪のまま 認めてもらえた安心感
そして置いてきてしまった 大切なものの行く末だけが心配だった
で、生まれ変わったわけですか?私は
と 少しおどけて 自分のことを聞いてみた
そのようだね
ちょうど良かったじゃないか 2回同じ日に生まれて
そんな言葉と一緒に 暦の方を指さした
大切だった土地の暦ではないけれど
今は そうとは思えないけれど
いつかきっと 十年前のあの日と続く時間と思えるはず
ならば 今回こそは声に出そう
聞いて貰って 見届けて貰おう
どんなときも 自分が護れなくても きっと立っていてくれる
次の十年は
安息を求めるが故に 立ち続ける
そんな十年
貴方がどこにいても どんなときも 疲れたとき 思い出せるように
いつでも私は立っています
貴方のためではなく 自分の安息をそこに求めるために
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