暁風
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 羨ましかったと言ったら 不謹慎だろうか?
 既に貴女が消えてしまった赤い月を 窓越しに見上げながらそんな言葉が浮かび上がる。



 闇は光のまばゆさに焼かれ 光は闇の穏やかさに沈む。
 しかし その快楽に本能が逆らえない。
 そんな言葉を 聞いた記憶がある。

 そんなのは嘘。
 快楽を求めているのは 人。

 人は 純粋にどちらかに寄り添うことは出来ないのよ。
 だから双方に恋い焦がれている。
 去ってしまった人はそう言っていた。
 キリスト教徒である彼女の口から そんな台詞が出たことは信じられなかったが 確かにそうだ。
 私は 闇に魅入られて行ってしまったあの人を羨んでいるのだ。



 貴女は今幸せですか?
 他の人の前では 決して言えない台詞。
「今宵の邂逅こそ永遠」
 確かに貴女はそう言っていた。
 貴女が幸せであるのならば それはそのままにしておくのが一番いい。
 昔の貴女に戻れないのであれば、
 私の知らない貴女の幸せをかなえてあげたい。

 だけど…私は 貴女を失うことが怖いのです。
 貴女と過ごした時間を自分だけのものにして 消してしまうことが怖いのです。



 助け出さなければならない。
 助け出したい。
 そんなことはただの言い訳。



 ごめんなさい。
 他の人が元の貴女に戻って欲しいと願っている間に 私は自分のために貴女を取り戻したいと願っている。

 ごめんなさい。
 貴女が護りたかった帝都のためではなく 貴女が愛していた仲間達のためではなく 自分の為だけに貴女を取り戻したい。

 ごめんなさい。
 嬉しそうに「永遠」を祝った貴女の時を 刹那に変えたいのは 多分私の我が儘です。
 私たちと過ごした貴女の最後を 最後としたくない私の我が儘です。

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