ふと見上げた窓の外 泣きそうだった空の色が変わってきたことに気が付いた
厚ぼったい雲の隙間から 漏れだした微かな光
天界からの階段 誰かの魂を迎えに来てくれる使いの人たちの通り道
誰かの大切な人を 奪い去りに来たのだろうか?
瞳を凝らして 先ほどより光が強くなった梯子の先を探してみる
ビルの向こう側? 誰かの家の上? それとも病院?
どこにも梯子はかかっていない
窓に手をつき 指で光の帯を辿ってみる
誰を迎えに来たのだろうか? 誰を連れてきたのだろうか?
光を見つめても ただ綺麗な白が見えるだけ
それとも誰かが誰かに会いに来たのだろうか?
会いたい人がいる その人が来てくれればいいのに
梯子を見つめながら そう思った
昔一番大切だった人 今でも一番大切な人
あの時は私も随分子供だったから あなたに伝えたいことがたくさんあったのに
出来たことと言ったらあなたを見つめることと 心と正反対に行動すること
大切だったのにわざと困らせた そのことで私を構って欲しかった
そう言うことでしか 大切にしていてくれることを確かめられなかった
見えた! 今はもうだれも使っていない古い歩道橋
忘れていた一つの思い出の場所
上着を手に取り外に飛び出す
天国からの梯子なら 誰かがきっとそこにいるはず
もしも降りてきたのが あなたではなくても降りてきた人に伝えて貰おう
もしもあなただったら…
もしもあなただったら 神様にお願いして少しだけ時間を貰って
今の私のこと みんなのこと
そしてあの時あなたに言えなかった一言を伝えたい
どうか私が行くまで 神様 梯子を消さないでください
|