本当は 帰りたかったんです
照れ隠しにいいわけをした後に そうつぶやいた
今は遠い 幼い日
帝都から帰ってくるはずの お父様を待ちわびて
街へと続く 一本道
ずっとずっと 待っていた
秋がきて 冬がきて
待っても待っても 帰ってこない
いつもはすぐきた便りも いつか
出しても出しても そのまんま
春がきて 夏が過ぎても
ずっとその場で待っていた
お父様に 教わった
全てのものを 見せたかったのに
秋がきて 冬がきて
春がきて 夏がきて
何度目かの 誕生日
まるで誕生日の祝いのように 荒鷹だけが帰ってきた
なにも言わずに 帰ってきた
お父様といるときと 何かが違う無口な荒鷹
その日 荒鷹を手に取った
技は違えてないはずなのに 正しく継いでたはずなのに
何にも答えてくれなかった
悔しくて 悔しくて
使うことしか 考えなかった
追いつきたくて 追い抜きたくて
技だけひたすら 磨いていた
けれどもそれは間違いだって
今更ながらに 気がついたんです
だから一度帰ろうかと
故郷に戻って ゆっくり話せば
眠りについてる お父様も聞いてくださる
二人のところで きちんと舞えば
きっとそれを 見てくださる
強くなるために 進むために
一つの区切りの日だから
もう一度
待つのではなくて 会ってきます
こんな忙しいときに 帝都を離れてごめんなさい
すぐに戻ります 少しだけ大きくなりに
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