桜随想

第11回 太正桜よ、永遠に

初出:Endless Recorder 2002-03-27 再録:2002-04-01

サクラ大戦4、意外なほどあっさりと終わってしまいました。進められないのではないかとか、完結という事実に思い余ったことを仕出かすのではないかとか、あれこれと心配していただけに拍子抜け。涙腺が壊れているとしか思えなかった3と違い、スタッフロールと最後のムービーで泣いたくらいでした。

ですが翌日、再びオープニングを眺めていると涙が溢れてきました。私がサクラと出会って4年8ヶ月、いつからか無理をしていたのかもしれません。次々と出される関連作品、ゲーム本編ですら十分に楽しむ余裕のないまま、追われてきた感もありました。

それももう終わりです。これからは閉じた物語を、完成された世界を、急くことなく慈しんでゆけるのですから。完結の寂しさではなくその安心の、そしてこれからも好きでいられる喜びの涙。サクラは散ったのではありません。降りた幕の向こうで、永久に咲き続ける花となったのです。


第12回 最終幕

初出:Endless Recorder 2002-03-28 再録:2002-04-01

長い一日もクリアし、一区切りついたかなといった感じです。ゲームは3回通りプレイして、大神とマリアのエンディングを2回ずつ見ました。もっと明確な結末があってもよかったかなとは思いますが、私的には大神エンドで確定。気持ちよく納まりをつけることができました。

もう花組は戦わずに済んでほしいこと、風組と巴里華撃団が残っていたことから、出撃シーンはイメージと捉えています。二つの都で少女たちを率い、護り、戦った大神の活躍を総括するものとして。しっかと地を踏むその勇姿は、彼女らの、そして私の胸にも鮮やかに宿り続けることでしょうから。

そして歌い上げられる、出会いの喜び、生命の煌き。少女たちは知っています。その花を咲かせる源を、花と足らしめる者を。手折られることのない美しい終わりです。刀を納め、鎧を外し、大神の物語としてのサクラ大戦は、まさにグランドフィナーレを迎えたのです。


第13回 ただひとつの

掲載:2002-04-08

批判的な意見も多くあるように、確かに4の話は短いです。限られた枠の中で大人数を活躍させようとするのですから、どうしても無理が生じます。豊か過ぎるともいえる個性が売りである少女たちなのに皆一様に勘違いをする等、今まで以上に強引な展開に抵抗を覚えることは多々ありました。

また、ゲーム中の大神像と私の中のそれとの開きを感じもしました。LIPSの結果に「そういうつもりで選んだわけではないのに」と思うこともしばしば。3では同調させることによって感動できた大神の言動に、突っ込みを入れてばかりで少々悲しくなってしまったことも事実です。

それでも私は4を高く評価しています。制作発表時から報道されてきた「完結編」としての役割を果たしている、それは不満点を補って余りあるものです。厚みのある物語や豊富な付加要素は、3までにたっぷりと味わわせてもらいました。そのまとめとして位置する4が長編である必要はありません。サクラ大戦4は結末を迎えるためのゲームです。


第14回 生きてる喜び

初出:Endless Recorder 2002-01-19 再録:2002-04-08

隊長と一緒にいる時が……私は、一番幸せなのですから……

サクラ2第十二話で聴くことのできるこの言葉が、マリアの台詞で最も大切にしたいものかもしれません。それは2年前に大神が告げた約束へ、マリアに赦しと癒しを与えた言葉へ、彼女が返してくれた答えでした。

生きて、生き続けて、君を護る。そう誓った大神にとって、彼女の幸福は何よりの願いでした。それがここにあるのだと、他の誰でもない自分と共にあるのだと、彼女は伝えてくれた。そしてこれからも、その喜びを分かち合ってゆける。そう限りなく満たされた一言だったのです。


第15回 抱擁

初出:Endless Recorder 2002-03-18 再録:2002-04-08

すみれくんをヒロインに、サクラ1、2をプレイしていました。2のしおらしさも可愛いのだけど、私的にはやはり1第九話の彼女が好きです。衝撃と喪失の叫びを憎しみと変え、あやめや大神にぶつけなければならなかった。そうしなければ、襲いかかる事実の毒に耐えられなかった。

理解されたい、されてはいけない。矜持ゆえに板挟みになってきたすみれ。傷つけることを恐れ、立ち入らないことを優しさとしてきた大神。そんなふたりを隔てていた壁が溶けた瞬間でした。抗わなくていい、受け止めていい。そうわかり合えた出来事でした。

また、その痛々しい姿に、花組の少女たちが置かれている過酷な現実を叩きつけられます。そういった意味でも極めて重要な場面でしょう。このイベントとあやめさんの日記を見ずに、サクラは語れません。


第16回 口ずさむ思い出

掲載:2002-04-12

「檄!帝〜最終章〜」を購入しました。当初「隊長、これはちょっと……」と思ってしまった大神の歌声ですが、繰り返し聴いているうちに気に入ってしまった私は贔屓目が過ぎるのかな。いえ、もう最後だし何でもありでしょ、なんて気持ちも入っていますが。

私がゲームの場面場面を思い返す時、台詞と画像を結びつけるように音楽が浸透しています。耳に馴染んだ曲が4の随所で流れるたび、湧き上がる思い出に頬が緩みます。そういう意味でもフィナーレに相応しい作りなのだなと。そして、そんな思いを持てる名曲の数々に触れられたことは、実に恵まれていると思います。

サクラの音楽にだけは裏切られない、その評価を落とすことなく全うしてくださった公平先生にはただただ脱帽。常に歌と共にあったサクラ大戦。そこで果たされた役割の大きさと広がりに、改めて敬意を表したい思いです。