春うらら…


「れ〜に〜」
「ああ、待ってよ、アイリス。」
春のある日アイリスとレニはいつものようにフントの散歩に出かけた。

『レニ。今日はアイリスの秘密の場所に案内してあげるからね。』

アイリスがそういって連れてきたのは蒸気列車の駅を越えたところにある大きな公園だった。ここには大きな図書館などもあるのでレニも何度か訪れたことがあった。
公園の入っても、アイリスはどんどん先に進んでいってしまい、レニは追いかけるのがやっとの状態だった。
「ああ、待って、アイリス。」
とにかくレニはアイリスを見失わないようにフントと一緒に公園の奥へと進んでいった。
「れーにー、こっちだよーーー」
アイリスは公園の遊歩道をはずれて、林の中に入っていた。
「アイリス、そんなとこにいったら危ないよ。」
「平気、平気。いいから、ついてきてー」
レニの言葉など聞く耳持たないという感じでアイリスは林の奥へとどんどん進んでいく。
「しかたないなぁ…行くよ、フント」
レニはフントを促してアイリスの後について林の中へと入っていった。
しばらくすると突然、目の前の景色が変わった。
「わぁ…」
レニがは思わず声をあげた。
林をすぎたところには一面のレンゲ畑が広がっていたのだ。
「どうレニ。すごいでしょう〜」
アイリスはうれしそうにレンゲの花の真ん中に座り込んで両手を広げて叫んだ。
「うん。帝都にこんな場所があったなんて…しらなかったよ」
「アイリスもね、この前フントとお散歩に来たときにみつけたの。」
「そうなんだ……」
レニは少しまぶしそうに目を細めてレンゲ畑をゆっくりと見渡した。
「ねえ、レニもこっちおいでよーーー」
「あ、うん。」
呼ばれて行くとアイリスはレニをとなりに座らせた。
「あのね、アイリス、レニに手伝ってほしいことがあるの。」
「どうしたの?」
「あの…あのね。アイリス、このレンゲのお花でお兄ちゃんに花飾りを作ってあげたいんだけど…。レニも手伝ってくれる?」
「え?…でも…僕、花飾りなんて作ったことないし…」
「大丈夫。アイリスが教えてあげるよー」
「でも…」
レニは足下のレンゲの花に目をやった。
「ね、やろうよーー」
結局、レニはアイリスに習いながら、レンゲの花を編むことになった。
はじめはとまどっていたレニだったが、元々は手先が器用なのか次第に上手に編めるようになっていった。
「すごーい、レニ早いねー、アイリスまだこれしか編めてないのに……でも、これなら、お兄ちゃんに素敵な花飾り作ってあげられるね。」
そのかわいらしい顔をくしゃくしゃにして笑うアイリスに、レニも微笑んだ。
「うん。そうだね。」
次第に形になっていく花飾りを見ながらレニはあの日のことを思い出していた。
帝劇にやってきて、戦う意味を見つけられず、迷い道に入ってしまった自分に花組のみんなを、隊長を信じさせてくれ、戦うという本当の意味を自分に教えてくれたあのアイリスの花飾りを。
「アイリス…」
「なーに?レニ。」
「ありがとう…」
「どうしたの?レニ。急にそんなこと言っておかしいよ。」
不思議そうに小首をかしげるアイリスに、レニは微笑んで言った。
「アイリス…前に僕にも花飾りをくれたよね。あれは僕にとっては今も大切な宝物…。」
「レニ……」
「誰かから、あんなふうにプレゼントもらうなんて、初めてだったし…あの花飾りにはアイリスの気持ちがたくさん込められていたように感じた…。」
レニの言葉にアイリスは大きく頷いた。
「そうだよ。アイリス、レニに元気になってほしくて、レニともっともっと仲良くなりたいって思ってあの花飾り作ったの。…レニがそんなふうにおもってくれて…アイリスもうれしいな。」
「本当にうれしかったんだ…本当に…」
レニはふっと言葉をとぎらせた、そして再びゆっくりと口を開いた。
「…この花飾り…隊長も喜んでくれるかなぁ…」
「うん。レニとアイリスとで一生懸命作ってあげたら、きっとお兄ちゃん喜んでくれるよ。」
「ほんと?」
「うん。絶対だよ。だから、一緒にお兄ちゃんが驚くような花飾り作ろうね。」
「うん。そうだね、アイリス。」
二人は微笑みあうと再び花飾りづくりを始めた。

帝都の春は今、真っ盛りである。

Ende


★番頭・彩のいいわけ★

とりあえず、番頭ろざリーのリクエストでアイリスレニを書いたんですが
どうでしょうねぇ…なんだかほのぼのとしたまま終わっちゃいましたねぇ(笑)。
一応、これは1000ヒット記念ということで書いたわけですが、何か間違ってるような…
というか番頭ろざりー1500番踏んづけちゃった記念かもね(笑)


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