by 中原陵成    

初めてそれを知ったのは
舞台を知らない 文字もよめない老人から
彼の声から 彼の記憶から
芝居という言葉を聞いたのだ

雪をしのげる場所もなく
手元をてらす灯りもなく

ただ聞こえるは 昔々の記憶の中の名台詞
ただふれるは 想像だけの明るい未来

少し少し語られる きらびやかなど無かったけれど
一時だけの空想に 一瞬だけのやすらぎに
それだけで 全てはむくわれた

いつしか彼が消えた後
彼の記憶と異なるけれど
自分の中の記憶の中の彼の台詞をまねてみた

見たこともない誰かの夢
見られるかも知れない明るい世界

あれを見ていた戦友たちは
自分の記憶の中の何かの光景 しばしの間見られたろうか?

今これから立つ舞台の先の
人の思いに足せるだろうか?




oath…神様との契約、召還。または宣言。