2000ヒット記念小説(笑)

青い月夜の狂想曲


美しい月の夜、レニは一人帝劇の屋根の上で深いため息をついていた。
「隊長…」
その名をつぶやくだけで胸が熱くなるような気がする。
胸、そうなのだ胸だ…この胸がもうちょっと大きくなれば…。隊長も女の子としてみてくれるかもしれない…。そんなことを考えながら、レニはふと自分のブラウスの胸元を見つめた。
「やっぱり…男の人ってマリアみたいにグラマーな方が好きなんだろうなぁ……」
レニがそうつぶやいた時だった。
「それは違うぞ!レニくん」
突然の声にレニは当たりを伺った。
「誰だ、この僕に気配を感じさせない、お前はいったい……」
「フッフッフッフッーー!トウッ!」
ポロロローーーーン♪
「は、あなたは…」
「いやぁ〜レニくん。月夜はいいなぁ〜レニくんと一緒にこーーんな美しい月が見られるなんて……僕はしっあわせだなぁ〜」
「…あなたは確か月組の…」
「そぅ、私こそは帝国華撃団・月組隊長、加山雄一だぁ。ところで、どうしたんだぁ。レニくん、そーんなに思い詰めた目をして…そんな顔は君には似合わないぞぅ〜。」
しばらくポカンとして見ていたレニだったが…突然その瞳から大粒の涙が一つ、二つ…とこぼれ落ちた。
「ああ…加山隊長〜」
そして次の瞬間、レニは加山に飛びついた。
慌てたのは加山である。屋根から落ちないように気をつけながら優しく抱きしめてやった。
「おお、レニくん…君はなーーんて大胆なんだぁ。どうした?何をそんなに悩んでいるんだ?」
「…隊長が…好きなのに…こんなに好きなのに…だめなんだ…僕なんて…」
「おお…レニくんがこーんなに嘆いているのは大神のせいかぁ…大神ぃお前も本当に罪な奴だなぁ…でも、どうしてそんなことを思うんだい?」
「だって…だって………隊長は僕とデートしてもキスもしてくれないんだ…きっと僕が肉体的魅力にかけるから…」
「ううーん。レニくんどーーしてそんなことをおもうんだい?君はこんなにかわいいのに」
「だって…僕はマリアやカンナみたいに胸もないし…背も低いし……とにかく僕じゃだめなんだよーー」
叫ぶようにいうとうわぁーーんと大きな声を上げて加山の胸に顔を押しつけて泣きじゃくった。
「ああ、大神ぃ、お前はなんと罪深い奴なんだぁ。…本当にあいつは真面目すぎるんだぁ…だから、俺の愛も受け取ってはくれないんだぁ〜」
加山がもらい泣きを初めてしまったのに驚いてレニが顔を上げた。
「加山隊長も…隊長のことが好きなの?」
「ああ…ああ…俺は士官学校の頃からあいつのことが好きで…好きで…好きでたまらなかったというのに…あいつは花組で鼻の下を伸ばしているなんて…あああああああああ…俺はなんて不幸なんだぁーーー」
「加山隊長ーーーー」
二人は屋根の上でヒシッと抱き合ったまま泣き続けた。


 一方、ここは紅蘭の実験室…もとい私室。
「うわぁーーーーーーーーーーー!」
試薬を取り出そうと戸棚を開けた紅蘭が叫んだ。
「えらいこっちゃぁ…どないしよ…」
一人で部屋の中をあたふたと走り回っていたが、はたっと立ち止まると、
「とにかく…大神はんに知らせにゃあかん…」
慌てて部屋を飛び出した。


「大神はん!大神はん!いてはりますか?」
大神の部屋のドアをドンドンと叩くが一向に出てくる気配がない。
「あかん…大神はん、部屋にはおらんわ…どないしよ……」
紅蘭が深いため息をついたときだった。
「だ〜れ?騒がしいわよ。」
騒ぎを聞きつけて現れたのはマリアだった。
「ああーーーマリアはん、ええとこにきてくれはりましたわぁ。大神はんどこにおるかしらん?」
「隊長?…この時間なら見回りじゃないかしら…でも、紅蘭。そんなにあわててどうしたの?」
「それがなぁ…実はさっきレニと廊下で会おたときにな、頭が痛い言うからうちが常備薬してる漢方薬を飲ませたんや」
「あら…でもそれが何か問題があったの?」
「そうやないんよ。その薬はなーんの問題もないんやけど、その時に間違えてうちが作った他の薬をレニに飲ませてもうたんや。」
「なんですってッ!それはいったいどんな薬なの?」
「それがなぁ……「よろめきくん」いうんやけど…惚れ薬なんよ。」
惚れ薬?!あなた、なんでそんなものを!」
「いやぁ…堪忍なぁ、マリアはん。実はな、帝劇の書庫でおかしな調剤法の載った本を見つけて、おもしろ半分に作ってみたんよ。」
紅蘭の答えにマリアは深いため息をつくしかなかった。好奇心旺盛な紅蘭がそんなものをみたら作りたくなるというのはわからないでもない…しかし、それをレニに飲ませたなんて…。
「……それをレニが飲んだのは間違いないのね。」
「そうや、うちが薬渡したらその場で飲んでしまったんよ、なぁ…どないしよ、マリアはん。」
「薬の効果はどのくらいかわかる?」
「はっきりはせんけど…そんなに長いことはない思うわ。ネズミは二日で効果が切れたし。」
「…そう…それでレニは部屋にいるの?」
紅蘭は首を横に振った。
「ここに来る前にレニの部屋に寄ったんやけど…部屋にはおらへんのんや。」
「そう…レニったらどこに行ったのかしら…とにかく、二人で手分けをしてレニと隊長を捜しましょう。隊長が見つかったら隊長にもレニ探してもらうってことで。」
「了解や、じゃあ、うち地下と1階を探してくるわ。」
「そうね、じゃあ、私は2階と屋根裏を見てくるわ。」
二人はおのおのの駆けだした。


 一方、そんなこととは知らない屋根の上。
 少し落ち着いたのかレニと加山は泣きやんでいたが、そのまま抱き合って二人星空を見つめていた。
「レニくん。ほぅら見てごらん。あの星。あれがイカルスの星。希望の星だ。君はまだ若い、思い続ければきっとあの鈍感な大神だって君の気持ちに気づくはずだ」
「…加山隊長…でも…きっとだめだよ。…隊長はマリアやカンナみたいなダイナマイトボディが好きなんだ…僕には肉体的な魅力がないんだ…」
「そんなことはない…僕には君は十二分に魅力的だ…」
「加山隊長……優しいんだね……僕…加山隊長が…好きになったみたいだ………」
「レ、レニくん?!」
「…加山隊長は…こんな移り気な僕は嫌い?」
レニは顔を上げた。潤んだ瞳が加山を見つめる。
「レ…レニくーーーん、俺も…俺も好きだぁーーーー」
二人は堅く抱き合った。加山の手がそっとレニの胸にふれる。
「ん?……」
その感触に加山の手が止まった。
「…どうかしたの?加山隊長?」
「あ…あの、レニくん、一つ聞きたいんだが…君は…その…もしかして女の子?」
「そうだよ。何か問題ある?」
「う…うッわぁぁぁぁぁぁーーー!!!!!」
レニの答えを聞いたとたん加山が奇声をあげてレニを突き飛ばすように、身体を離した。
「か…加山隊長…どうしたの?」
「うわっ、うわっ、女、女…うわぁーーー」
叫ぶ加山の顔は蒼白で所々に赤い発疹まで現れている。
「誰かいるの?」
加山の叫び声を聞きつけたマリアが屋根に登ってきた。
「レニッ!それにあなたは確か…月組の加山少尉。」
マリアの姿を見つけたレニは再び泣き出した。
「マリア〜、やっぱり僕には魅力がないんだぁ…加山隊長も僕を嫌いなんだ〜」
「ああ、レニ…」
突然泣き出したレニをマリアはそっと抱きしめた。
「そんなことないわよ、レニ。貴女はこれからどんどん魅力的なレディになるんだから。」
「本当に?マリアみたいになれる?」
「私?…そうね、貴女ならきっとわたしより素敵なレディになれるわよ。」
「…マリア…優しいんだね…マリア…好き…」
レニはそういうとうっとりとした表情でマリアに抱きついた。
「レニ……これが「よろめきくん」の効き目なのね…」
そっとレニを抱き返しながらマリアはため息をついた。
そんな二人を見つめつつ、やっと落ち着きを取り戻した加山はすくっと立ち上がると
ポロロロロローーーーン♪
と抱えなおしたギターをつま弾いた。
「古人曰く、「立つ鳥後を濁さず」さらばだ、レニくんシアワセに!アディオーーーーーーーース!
そう言い放つと、呆然としているマリアを残し、加山は何処へか去って行った。


「マリア、レニの様子は?」
地下格納庫の見回りをしていた大神が紅蘭と一緒にやってきたのはマリアがレニを自分のベッドに寝かしつけた後だった。
「ええ、とっても気が高ぶってたようですけど、疲れてたみたいで、やっと眠りました。」
「そうか…しかし…加山かぁ…フフフッ…見たかったなぁ…奴の慌てた顔。」
「隊長、不謹慎ですよ。…でもいったい加山少尉はどうしたっていうのかしら…」
「実はね。加山は極度の女性恐怖症でさ、女性に触れただけでジンマシン起こすんだよ。」
「まあ。…でも加山少尉って月組の隊長ですよね?レニが女の子だって知らなかったのかしら…」
「大方、写真見て好みだったから、レニのこと男だと思いこんでたんだろう。あはははは。」
「まあ…ふふふ」
二人は悔しがっている加山を想っていつまでも笑いが収まらなかった。

Ende?


<彩番頭の言い訳>
すみません…とんでもない話を書いてしまいました(^_^;)
ネタ元はろざ番頭とお互いに煮詰まってる時にICQでやっていたバカな会話です(笑)
「よろめきくん」も実はろざ番頭の命名でございます。
私が加山を書くとこういう奴になってしまうという…ことにしておきましょう。
2000ヒット記念のバカ騒ぎということで…お許しください(^∧^)


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